【目標】
●「同素体」の意味を正確に理解し、「同位体」と区別できるようにする!
●「同素体」が存在する4つの元素と物質名、性質や特徴を整理する
同素体自体をおさえられている人は多いが、正確に説明できる人は多くない。
細かいところではあるが、正確に理解できれば取りこぼしがなくなる。
同素体とは
同素体の単元で最も伝えたいことは以下がすべてとなります。
【同素体とは】

おなじ炭素Cからなる物質でダイヤモンドと黒鉛は大きく性質が異なります。
ダイヤモンド…無色透明で極めて硬く、電気を通さない性質
黒鉛…黒色でうすくはがれるやわらかさがあり、電気を通す性質
このダイヤモンドと黒鉛のような関係を「互いに同素体である」といいます。
間違えがちなこと
「同じ元素」という部分にフォーカスされがちで、抜けがちなのが、「単体」である必要があることです。
※単体についての説明は以下を確認してください!

つまり、「同じ元素」で「性質が異なる」物質でも、単体でなければ同素体ではない!ことになります。この部分が抜けがちな人が多いので正確に理解しましょう。
(例)一酸化炭素COと二酸化炭素CO2はCとOの「同じ元素」で「性質が異なる」物質だが、元素記号2種類からなる「化合物」であり、「単体でない」ため、同素体ではない。
※同素体と同位体がこんがらがる人も多い。同位体について以下の記事で確認して区別できるようにしよう。
【現在記事準備中です】
同素体4つの元素を覚える
【同素体は以下の4つを覚えよ!】

S:硫黄 C:炭素 O:酸素 P:リン
この4つの物質と性質の違いを覚えてしまいましょう。以下に1つずつ紹介します。
【硫黄S】
①斜方硫黄 S8:黄色の大きな結晶。常温で安定である。硫黄を液体の二硫化炭素CS2に溶かしたのち、二硫化炭素を蒸発させると得られる。
②単斜硫黄 S8:黄色の針状の結晶。常温で放置すると斜方硫黄になる。硫黄を加熱して液体になったところでろ紙に注ぎ、ろ紙上で冷ますと得られる。
③ゴム状硫黄 Sx:黄色~褐色の固体だが、ゴムに似た弾性をもつ。硫黄を加熱して液体になったところをさらに加熱すると流動性がなくなり、さらに強熱して液体状になったものを水に注ぐと得られる。
【炭素C】
①ダイヤモンド:無色透明で極めて硬い結晶。電気を通さない。
ダイヤモンドは天然で最も硬いといわれる。よって宝飾だけでなく「ダイヤモンドカッター」など材料を切断する道具としても用いられる。
②黒鉛:黒色でうすくはがれやすい。電気をよく通す。
③フラーレン:球状の形をした分子の総称。C60やC70などの分子がある。C60は炭素が五角形と六角形で結合した形が球状になったサッカーボール構造である。

④カーボンナノチューブ:炭素原子が結合して筒状になった分子。直径数nmとなる。
※ダイヤモンドや黒鉛の構造に関する問題は化学基礎でも化学でも出題される。詳細は別の記事で説明する。
【酸素O】
①酸素 O2:無色・無臭の気体。空気中に約20%存在する。
②オゾン O3:淡青色・特異臭の気体。有毒・殺菌作用をもつ。
「特異臭」は人によって感じ方が違うが、筆者は「魚の生臭いにおい」と感じました。
【リンP】
①黄リン:黄色の固体で猛毒。空気中で自然発火するため、水中に保存する。
黄リンのうち、純度が高いものは色が白くなるので「白リン」とも呼ばれる。
②赤リン:赤色の粉末で毒性は小さい。また黄リンのように空気中で勝手に反応することはない。マッチの側薬に使用される。
※反応性の高い物質の保存方法で「水中保存」と「石油中保存」のものがある。「石油中保存」はアルカリ金属の単体である。詳細は別の記事で説明する。
同素体か否かの区別ができるようになる
問 次の(1)~(6)のうち、互いに同素体であるものはどれか。すべて選べ。
(1) 鉛と黒鉛
(2) 青銅と黄銅
(3) 黄リンと赤リン
(4) 一酸化窒素と二酸化窒素
(5) 酸素とオゾン
(6) 重水素と三重水素
解答解説
(1) 鉛と黒鉛
化学式で書くと、PbとCである。同じ元素ではないので同素体でない。
(2) 青銅と黄銅
この2つは銅を主成分とした合金である。
化学式で書くと青銅はCu+Sn、黄銅はCu+Znである。
銅という同じ元素はあるが、すべてが同じ元素ではなく、
さらに単体ではなく混合物であるので同素体ではない。
(3) 黄リンと赤リン
どちらもPであらわされる。
「同じ元素からなる単体で性質が異なる」ため、同素体である。
(4) 一酸化窒素と二酸化窒素
化学式で書くとNOとNO2である。どちらも同じ元素からなり、
性質も異なる(例えばNOは無色の気体、NO2は赤褐色の気体)が、
単体ではなく化合物であるため、同素体ではない。
(5) 酸素とオゾン
化学式で書くとO2とO3である。
どちらもOであらわされる。
「同じ元素からなる単体で性質が異なる」ため、同素体である。
(6) 重水素と三重水素
2Hと3Hである。同位体なので、同素体ではない。
(※先の「同位体」を知らないとわからないので、別記事で説明する)
A. (3)と(5)が同素体である。
まとめ
【同素体とは】

【同素体は以下の4つを覚えよ!】

S:硫黄 C:炭素 O:酸素 P:リン